『告発のとき』:もうひとつのノーカントリー:Myムービー掲載
イラク戦争から帰還した直後に失踪した息子を捜索する父親が事件の真相に近づいていく物語である。
辿りついた真相は深い闇であり、父親にとって、信じていたこと全てを失うに等しいものである。
その意味で、ただ単にトミー・リー・ジョーンズが主演しているからということではなく、もうひとつの『ノーカントリー』といえよう。
『ノーカントリー』では、理解できないところへ到達してしまった暴力の世界を前に、追跡放棄をしてしまったトミー・リー・ジョーンズであったが、この作品では、元敏腕軍警察の経歴から事件の真相に肉薄していく。
その過程で彼は、知りたくない事実を知ってしまう。
息子が仲間から「ドク(医者)」と呼ばれていた理由。
信頼していた息子の別の姿。
「日にちが異なれば、被害者の彼が、オレを殺していたって、何の変哲もない」と、無感情に答えてしまう犯人。
トミーリー・ジョーンズが現役の軍人だった頃には、想像も及ばない回答。
更に、息子を殺し、バラバラにして焼却しようとした後に、「腹が減ったから」として、平然とフライドチキン店に繰り出してしまったという犯人。
その平然ぶりが、現役時代の感覚では、もう掴み取ることができない。
ベトナム戦争からイラン戦争へと戦争を重ねるうちに、もうここまでアメリカの心が壊れてしまっている・・・
・・・・
映画の冒頭、息子から父へ電話が掛けられる。
「ここから助け出して欲しい」と。
息子からメールで送られてきた一枚の写真とともに。
道端になにやら小さな子供が斃れているのを遠くから携帯電話で撮った写真・・・。
息子の心が壊れてしまう直前の、心からの救いの声。
それを父はキャッチすることができなかった。
・・・・
辿りついた真実の闇も大きいが、息子の声を受け止められなかった後悔も、あまりにも深い。
だから、ラストで掲げられる逆さまの星条旗が心に深く沁みる。
もうどうにもならない。この国を助けて欲しい。この自分の悔恨の念を助けて欲しい、と。
父親役のトミー・リー・ジョーンズをはじめ、重厚な演技陣で、特に父親と共に真実を追究する刑事役のシャーリーズ・セロンが良い。
内面の強さと知性が感じられ、素晴らしい女優になったと感心した。
全体評価は★4つです。
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この記事へのコメント
最後の星条旗は確かに心にしみますな。
スーザン・サランドン(大ファンです)も出番は少ないながらもさすが貫禄、夫婦の奥行きを深めていたと思いますよ。