『ロルナの祈り』:ダルデンヌ兄弟、力作も今回は物語に寄り添えず
ダルデンヌ兄弟の作品は『ロゼッタ』で感銘してから処女作『イゴールの約束』を含めて続けて観ています。
前作の『ある子供』のシンプルで力強い映画に深く感銘し、今回の新作も期待していました。
が・・・
うーむ、物語を語るのに精一杯の様子で、これまでの映画の息せき切った感情の高まりが感じられない出来栄えでした。
今回から手持ちの16ミリカメラから通常の劇映画で使用される35ミリカメラに変更したせいか、登場人物の息遣いにまで肉薄する感じはなく、映像が平板に見えてしまいました。
ダルデンヌ監督作品では、この映像の平板さは大きな失点。
その上、今回は偽装結婚によりベルギー国籍を得ようとするロルナ(アルバニア人だということは終盤で判りました)の物語が、つくりすぎている感じが拭えませんでした。
東欧と西欧のボーダーレスが産んだ象徴としての偽装結婚の物語は目新しいものではありません。
が、偽装結婚の相手に麻薬中毒者を選び、その偽装夫の死を前提としているあたり、背筋が寒くなるのを感じます。
この他者の生命と引き換えに得る自由、それに対する贖罪、そうまでしなければ生きられない不自由さなどを、ない交ぜにして描いていくのですが、ロルナの変わらない表情から、ヴィヴィッドに感じ入ることが出来ませんでした。
また、後半、ロルナが信じる妊娠についても、唐突な感じが否めません。
偽装夫との一夜の出来事、それも彼が一旦は足を洗った麻薬の世界へ再び手を染めようとするのを制止する感情の爆発としての一夜の出来事。
そして、その妊娠が・・・・だったこと。
この終盤に来ると、象徴的な物語が些(いささ)か浮ついた上滑りのような感じがしました。
日本題名では巧みに『ロルナの祈り』としていますが、原題では『ロルナの沈黙』。
黙して語らずというロルナの姿に、宗教的な贖罪と希望を垣間見ることができそうでできない、そんなもどかしいラストショットでした。
今回は★3つ半としておきます。
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