『オーストラリア』:牛追い西部劇、戦火の恋愛、人種の融合の大作大河ドラマ
久し振りに俗っぽい大作大河映画を楽しませてもらいました。
いやぁ、バズ・ラーマン監督は古典的題材を俗っぽい現代感覚で甦らせるのが大好きな様子で、それはこの作品でも遺憾なく発揮しています。
『ロミオ+ジュリエット』ではご存知シェークスピアの悲恋物語を、原作本来の猥雑さで甦らせ、『ムーラン・ルージュ!』でも飾り立てたミュージカル世界を構築していました。
今回は、というと、故国オーストラリア賛歌。
かと思いきや、おいおい、バズ・ラーマン流西部劇ではありますまいか。
第二次世界大戦が忍び寄る時代に、イギリスからオーストラリアにやって来たレディが、千何百頭かの牛を追って、オーストラリアの大地を南から北へ大移動する。
牛追いは西部劇の定番。更にスタンピード(大暴走)も定番。
そんな映像を、CGを織り交ぜているとはいえども、21世紀に観られるとは、思いませんでした。
鼻っ柱の強いレディのニコール・キッドマンと、これまた腕っ節の強いヒュー・ジャックマンの組合せも定番といえば定番ですが、そこがまた楽しい。
運良く目的地まで牛を運んだ後も、鉄の船への積み込み合戦なども見ることが出来、堪能の前半でした。
後半は、太平洋戦争を背景にした戦火での男女のすれ違い。
これも定番ですが、『パール・ハーバー』で見たような描写なので、前半と較べると、ちょいと興味が落ちました。
とはいえ、見所はオーストラリア国家「ワルティング・マチルダ」が流れるシーン。
それは、それまで女性と黒人(先住民のアボリジニのこと)が足を踏み入れることを許さなかった港の酒場テリトリーが、戦火でボロボロになった時に、初めてヒュー・ジャックマンのアボリジニに相棒(それも亡き妻の兄)を受け容れて、一緒にラム酒を飲む件(くだり)。
このさり気なさは、意外とバズ・ラーマン監督の繊細さを感じさせるところです。
が、それとともに、監督のしたたかさも感じます。
つまり、
ニコール・キッドマンが大切に思うアボリジニと白人の混血少年ナラを狂言廻しにして物語を進めていくにも係わらず、オーストラリア的人種の融合を別のキャラクターに背負わせるとは・・・・。
このキャラクター配分には意図があるとも思えます。
この酒場テリトリーでの人種融合のシーンはあるものの、ラストは混血少年ナラの「大人への成長の旅(ウォークアバウト)」で幕を閉じます。
融合はするものの、敬意を表した上で、先住民族とはヤハリ異なる部分があるのだと・・・・
幾分か、ジレンマを抱えているオーストラリア人としてのバズ・ラーマン監督の姿が見えるようです。
全体として、日本が敵役として悪し様に描かれている箇所はありますが、物語展開上のヒールの役割と思えばそれほど気になることもなく、前半の擬似西部劇の面白さを評価して、★3つ+1/4としておきます。
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<記事の誤りを訂正します>
「見所はオーストラリア国家「ワルティング・マチルダ」が流れるシーン」と記していますが、「ワルティング・マチルダ」はオーストラリアで最もポピュラーな歌のひとつですが、国家ではありませんでした。
表記も「ワルチング・マチルダ」もしくは「ワルツィング・マチルダ」を表記するのが正しいようです。
特にご指摘はありませんでしたが、本人発見誤りとして訂正いたします。
(2009.02.25)
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