『シングルマン』:スタイリッシュな映像で描く心もよう @ロードショウ・ミニシアター
ファッションには疎いので、トム・フォードの名前は初めて耳にしました。
本職はGUCCIなどで著名なクリエイティブ・ディレクターだとのこと。
なるほど、映像のセンスはスタイリッシュですねぇ。
オープニングは、水の中を漂う全裸の男性。ブルーの画面が幻想的。
しばらくすると、雪原で転倒した一台の自動車。傍らに横たわる男性の死体。白を基調にしたモノトーンのような映像。
死体の睫(まつげ)に纏わりつく雪。
その顔を覗き込むダークスーツの男。
あくまでもモノトーンの世界。
そのモノトーンの世界は、愛するひとを失くしたコリン・ファースの悪夢。
目覚めても、色が飛んだような世界。
映画は、愛するひとを亡くして八ヶ月、絶望の淵で最期を決断したコリン・ファースの一日を描いていきます。
愛するひとと暮らした日々。過去は色鮮やかに。
そして、現在は、色褪せてくすんだ色調で。
でも、しかしながら、もしあの愛するひとに代わって、また愛することが出来るのならば・・・
生と死の間を逡巡します。
そして、死から生への想いが蘇ると、画面は現在であっても色づきます。
スタイリッシュといえばスタイリッシュ。
判りやすいといえば判りやすい。
この判りやすさが、デザイナー的なところかしらん。
コリン・ファースの内面に、もっと共感・共鳴したいんだけれども、共感・共鳴しづらくしているのではありますまいか。
なので、エンディングは、色褪せてくすんだ色調から、ホンモノのモノトーンへ。
判りやすい。
が、あれれ、コリン・ファースと愛するひととの過去の映像で、1エピソードだけコントラストを強めたモノクロームの映像があったぞ?
あれは、どういう意味合いなのかしらん。
エンディングの先にあるものなのか。
それとも、ふたりの幸福は、色鮮やかな世界を超越したところにある(あった)ということなのか。
スタイリッシュな映画が残してくれた謎。
判りやすいわけではなかったのかもしれません。
抜群にスゴイ!とまではいきませんが、一見の価値ありとして、★4つとしておきます。
最近観たミニシアター映画のレビューはコチラから
⇒『悲しみもミルク
⇒『トゥルー・グリット』
⇒『パリ20区、僕たちのクラス』
⇒『英国王のスピーチ』
⇒『ヤコブへの手紙』
⇒『しあわせの雨傘』
⇒『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』
⇒『人生万歳!』
⇒『クリスマス・ストーリー』
⇒『Ricky リッキー』
⇒『永遠の語らい』
⇒『アンナと過ごした4日間』
⇒『ルイーサ』
⇒『ニューヨーク、アイラブユー』
⇒『バグダッド・カフェ』
⇒『彼女が消えた浜辺』
↑バックの写真はヒッチコック監督『サイコ』のジャネット・リー。
トム・フォード監督の女性に対する悪意がなんとなく感じられます。
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2010年映画鑑賞記録
新作:2010年度作品
外国映画41本(うちDVD、Webなどスクリーン以外10本)←カウントアップ
日本映画19本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 4本)
旧作:2010年以前の作品
外国映画82本(うちDVD、Webなどスクリーン以外81本)
日本映画22本(うちDVD、Webなどスクリーン以外20本)
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この記事へのコメント
ジェームス・ディーンのヘアースタイルには、笑えましたが、バックの写真がジャネット・リーとは、まったくわかりませんでした。
コリン・ファースは最近フツーのオジサン化している印象がありましたが、この映画では、魅力的でしたね、たしかに。