『クリスマス・ストーリー』:独特なスタイルで描く、血は水よりも濃し @ロードショウ・ミニシアター
2011年1月に休館が決まった恵比寿ガーデンシネマで、アルノー・デプレシャン監督作品『クリスマス・ストーリー』を鑑賞しました。
割引などのない平日にも係わらず、8割以上の入りで、少々出遅れたりゃんひさは、かなり前方の席で鑑賞することとなりました。
それはさておき、映画のハナシ。
クリスマスに集まったフランス家族のある話です。
原題では「un conte」(英語タイトルでも「a story」)と表現されているとおり、普通の物語と表現されていますが、いえいえ、それほど一般的ではありません。
父親は染色業を営み、かなり成功しているといえます。母親はカトリーヌ・ドヌーヴ。
若い頃、第一子を白血病で亡くしており、その下に長女、次男をもうけ、第一子がなくなった後に三男をもうけました。
その子供たちも、もう四十の峠を越え、三人とも人生の真っ盛りです。
長女は劇作家として成功し、夫も名通った物理学者。思春期の息子が情緒不安定なのが気がかり。
ただし、この情緒不安定なのは、劇作家の母親譲りかもしれません。
次男は画商のような・・・ちょっと正体不明。
かつて劇場経営に手を出して、多額の借金を抱えてしまい、借金の肩代わりと引き換えに、長女から縁切りを言い渡されてしまいました。
幼い頃からはみ出し者のところがあり、借金事件が決定的になったわけです。
また、酒癖も悪く、それも家族からはみ出す一因となっています。
三男は美しい妻との間に二人の息子をもうけて幸せそのもの。
ですが、かつて、妻を巡って、いまは画家である従兄となにやら曰くがあったようす。
そんなとき、母親のドヌーヴが骨髄性白血病であることが判明して・・・・
一家が集まることになるわけです。
そこで繰り広げられる確執を、過去の出来事を織り交ぜて、独特のスタイルでデプレシャン監督は描いていきます。
三男が生まれるまでを、影絵仕立てで描いたり、人物の紹介を子供の頃の写真と字幕(インサートタイトル)を使って始めてみたり。
また、何月何日というのを画面左上に小さくインサートタイトルで示して、画面に中央には、その日を象徴する言葉を映して、物語を始めます。
いずれも、舞台劇の何幕何場、といった感じです。
その他ちょっと驚かされたのは、画面を丸く縁取って始めるアイリス・インや、その逆に丸く画面を閉じていくアイリス・アウトの多用です。
古典的手法で、近頃とんとお目にかかりませんでした。
(大林宣彦監督作品では使用されることがありますけれど)
本来は、エピソードの開始・終了で使う手法なのですが、それを、垣間見る気持ちや、登場人物の類似性を示すのに使っています。
垣間見る気持ちは、重要な手元をアイリス・インで映して。
登場人物の類似性は、病気を告げられたドヌーヴと、ショックを受ける夫を同じアイリス・インで始めたり、といった具合に。
この独特のスタイルで、この映画が好きか嫌いかが分かれるところでありましょう。
そして物語も一応の結末は迎えるのですが、それが判りやすいハッピーエンドや悲劇の形をとっていないのも、好き嫌いが分かれると思います。
初めてデプレシャン作品に接したりゃんひさは、一応「好き」としておきますが、音楽の使い方も含めて、ちょっと饒舌すぎるところは気になるところ。
評価としては★4つとしておきます。
<追記>
物語の舞台となるルーベの街は、デプレシャン監督の出身地でもあります。
最近観たミニシアター映画のレビューはコチラから
⇒『悲しみもミルク
⇒『トゥルー・グリット』
⇒『パリ20区、僕たちのクラス』
⇒『英国王のスピーチ』
⇒『ヤコブへの手紙』
⇒『しあわせの雨傘』
⇒『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』
⇒『人生万歳!』
⇒『Ricky リッキー』
⇒『永遠の語らい』
⇒『アンナと過ごした4日間』
⇒『シングルマン』
⇒『ルイーサ』
⇒『ニューヨーク、アイラブユー』
⇒『バグダッド・カフェ』
⇒『彼女が消えた浜辺』
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2010年映画鑑賞記録
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外国映画45本(うちDVD、Webなどスクリーン以外11本)←カウントアップ
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外国映画90本(うちDVD、Webなどスクリーン以外89本)
日本映画22本(うちDVD、Webなどスクリーン以外20本)
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この記事へのコメント
いつもTBありがとうです。
2度やってみましたがどこにもTB入らないですね??
TB,コメントとも、りゃんひさの承認操作後に画面反映することになっています。
これに懲りずに今後ともご贔屓くださいませ。
好みかというと、う~ん、難しいところではありますが、決して嫌いではない。
一つ言えるのは、観た直後より、後からぐっとくる作品の持ち味かなということでしょうか。