『死にゆく妻との旅路』:どう死を迎えるか、どう死を受け容れるか @ロードショウ・ミニシアター
末期癌の妻とともに9か月もボロのワゴン車で日本各地を彷徨した夫。
遂には、「保護責任者遺棄致死」の罪状で逮捕されてしまうのだが・・・
実話、それも夫の手記を映画化したものです。
見るからにツライ映画のようなのだが、淡々とした語り口が、それほどツライとは感じることはなく、妻に寄り添う夫、夫に寄り添う妻、ふたりの道行のようで・・・
でも、なぜか幸せな死を迎えたと感じられました。
『死にゆく妻との旅路』、直截的なタイトルです。
しかし、死にゆくことを受け容れれば、それは「初めてのデート」でもあります。
至福のときでもあります。
なぜならば、ひとは必ず死ぬのでありますから。
そのことさえ受け容れれば・・・死は恐れることではなく、畢竟、フツーの生活となるのです。
旅を始めて早々に次のような描写があります。
道路脇で妻の髪を切る夫。
自らの髪に手を添える妻。薬指に光るマリッジリング。
鋏を持つ夫。薬指に光るマリッジリング。
二つのマリッジリングが静かに寄り添います。
ここで、死にゆくことを受け容れたふたりの旅路が、逃亡の旅ではなく、貧しいながらも「初めてのデート」・至福の旅と暗示していています。
その後は困窮の旅ではありますが、決して心は貧しくありません。
日本の四季に彩られた旅路は美しいものです。
この映画で哀しく感じるのは、妻の死そのものではなく、ふたりで過ごしたボロワゴン車の後部座席に妻の姿がないことです。
カラッポの、残された布団だけを見つめ抱きしめて夫は号泣します。
このシーンで図らずも声を押し殺して泣いてしまいました。
死ぬことは受け容れられても、死んだ後にいなくなってしまうことは、なかなか受け容れられない。
そのことに共感したためです。
死ぬことは判っている、ならば、望む形で、望むように死なせてやりたい・・・
でも、いなくなってしまうことは受け容れがたい。
男の意気地なんて、そんなものなんです。
評価は共感の★5つです。
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2011年映画鑑賞記録
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外国映画 4本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 0本)
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外国映画 8本(うち劇場 0本)
日本映画 0本(うち劇場 0本)
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この記事へのコメント
残される方は「不在」が辛いでしょうね…。
願わくば、先に逝きたい。とか。思ったり。
俺も じき、ソッチに行くから、それまで待っててくれ。と思うしかないですよね。