『J・エドガー』:興味深い人物像だが、不足も不満あります @ロードショウ・シネコン
1年1作撮り続ける監督クリント・イーストウッド。
老いて益々盛ん。
その新作は8人の米国大統領のもとでFBI長官を歴任したジョン・エドガー・フーバーの物語。
面白いとか面白くないとかいう以前に、よくこんな企画が通ったもんだ、と感心しました。
よっぽどフーバーFBI長官というのは米国ではビッッグネイムであるのですなぁ。
なんでもかんでも捜査し、分析し、整理するFBIの礎を築いたフーバーが、ゲイでマザコンだったというのは、かなり衝撃的であります。
映画では、そのゲイでマザコンの部分はかなり深く描けているのですが、そもそもフーバーが米国の安全安心に目覚めて、国家保全を求めたあたりの描き方がかなり貧弱。
偶々、フーバーの若き日の姿が登場するデニス・ルヘインの小説『運命の日』を読んでいたので書きますが、映画で自転車に乗ったフーバーが描かれていた1919年というのは第一次世界大戦が終結し、ヨーロッパで戦っていた若者たちが帰国すると同時に、米国国内でコミュニズムが席巻し、国内テロが多発する時期でありました。
映画では、高官宅が爆破テロにあうというシーンを描いていましたが、あんな寒々しいテロではなかったのです。
全国各地でコミュニズムの嵐が吹き荒れ、自由国家アメリカの存在そのものが脅かされた時代であったわけです。
その凄まじさ・遣る瀬なさが(たぶん予算の関係からでしょうが)描けていないため、FBI長官フーバーの真の実像の描き方があまりにパーソナルで、スケール感に乏しく、ファナティックな興味本位の域を出ていないように感じました。
評価としては★3つ半としておきます。
普通だったら映画になるような題材でもない(どちらかとえば小説向き)にもかかわらず、兎に角、興味深く観れるのですから、相当な演出力ですので。
------------------
2012年映画鑑賞記録
新作:2012年度作品
外国映画 1本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 0本)←カウントアップ
日本映画 2本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 0本)
旧作:2012年以前の作品
外国映画 5本(うち劇場 0本)
日本映画 2本(うち劇場 2本)
------------------
この記事へのコメント
クリント・イーストウッド監督作品を見逃す手はありません。観させていただきました。
おっしゃられたとおり、国家保全を求めたあたりの場面をもっとと思いました。ゲイでマザコンの部分の描写が多いです。普通に女性秘書を口説くところから、あんな方向にいっていまうとは--本人がゲイでマザコンであることにあそこまで こだわる必要は?と思いました。同性のパートナーから、実際はエドガー・フーヴァーは、自身が捜査の一線まで立ち入ってないと告発されるところは衝撃的でした。実在の人達を描く作品としまして、「父親たち--」「硫黄島--」など同様に
人物たちの善悪というより、事実としてこうだったという客観的な立場で描いているクリント・イーストウッドの演出はよいと思いました。
ディカプリオ氏 熱演もメイクで老けても声が老けてないような--デ・ニーロ氏の領域には まだかな----評価★3つ半納得です。