『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』: 興味深く観ましたが、画竜点睛を欠くかな @ロードショウ・シネ
1960年代アメリカ南部ミシシッピ州。
白人絶対主義が根底にあり、黒人の人権はまだ確立していなかった時代。
複数の家族とそれに仕える黒人家政婦の話。
この映画で伝えたかったことは、「物事を変えていくのは真実だけ。真実に目を向けて語ることがその出発点」ということ。
老家政婦に育てられた作家志望の女性は、虐げられている黒人家政婦たちに目を向け、彼女たちの真実を一冊の本にしようとする。
まだ、黒人たちは黒人専用の食堂やバスの席があり、仕える家で主人たちと同じトイレを使うことを許されない。
そんな時代なのだ。
映画では、多岐に渡る家族とその黒人家政婦が登場する。
中心となる黒人家政婦は2人だが、白人家族、とりわけ若い主婦たちは4~5人。
この多数の人々を的確に捌いていく演出の腕は確かなもので、2時間30分近い長尺にも係わらず、飽きることなく見せていきます。
ですが、後半、ちょっと方向を誤った感じ。
白人たちの迫害に怯えながらも真実を語った12名だかの黒人家政婦に焦点があてられるべき後半を、不当に扱った黒人から意趣返しをされる白人の話に収斂していくのはいただけない。
(意趣返しの内容を書くのは、ちょっと止しておきます)
その意趣返しが面白いのが却って性質(たち)が悪い。
黒人家政婦たちが語る真実で街が変わり、米国全土の黒人解放の端緒になったはずなのに、底意地の悪い白人娘をひとり悪者にして快哉、というのはいかがなものか。
主人公の黒人家政婦が、その白人娘に対して、寛容の精神を見せるのも、大人といえば大人の行動ではあるが、ちょっと過剰なような気がしないでもない。
うーむ、こんな長尺を飽きさせずに見せること、ホントウに凄いことなので★4つ半進呈と思ったのですが、やはり後半の収斂の仕方がいまひとつ納得できないので、★4つにしておきます。
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2012年映画鑑賞記録
新作:2012年度作品
外国映画 5本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 0本)←カウントアップ
日本映画 4本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 0本)
旧作:2012年以前の作品
外国映画11本(うち劇場 0本)
日本映画 4本(うち劇場 2本)
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この記事へのコメント
観させていただきました。
老家政婦に育てられた作家志望の女性の本を完成させようとする強い意志にひかれました。
真実に目を向けて立ち向かうことの大切さを知りました。一人一人をしっかりと描いているところが、この映画の良さだと思います。登場人物のキャラづけがしっかりとしてるので、話の展開に納得させられることが多かったです。
仕事先で指輪を盗んで質に売って捕まる若いヘルプの女性しかり、ミニーを雇用してくれる料理下手のシーリアしかり、スキーターの育てのヘルプのコンスタンティンしかり、黒人 白人というよりも おのおのこういった人達がいて、つながっていくのだという見せ方が上手いと思いました。おっしゃられたとおり、底意地の悪い白人娘をひとり悪者するというところは、さすがにもうちょっと違う描き方で--とも思いました。演出力は確かにすごいと思いました。★4つの見ごたえありですね。
映画を観る人口そのものが少ないのです。