『ジャージー・ボーイズ』:職人監督の手による流麗な楽曲入りドラマ @ロードショウ・シネコン
クリント・イーストウッドが傑作ブロードウェイ・ミュージカルを映画化した『ジャージー・ボーイズ』、徐々に上映回数が少なくなっているので、こりゃヤバイ。
ということで近所のシネコンで鑑賞しました。
ありゃ、楽曲入りのドラマで、ミュージカルじゃないじゃん・・・
まぁそれはさておき、映画。
米国ニュージャージー州の田舎町ベルヴィルは多くのイタリア移民が暮らす町。
床屋見習いのフランキー・カステルチオは、美しいファルセットの持ち主。
地元の大物ジップに可愛がられている。
バンドでギターをやっているチンピラ兄ぃのトミー・デヴィートからバンド仲間として誘われる。
売れないバンドだったけれども、素晴らしい楽曲をかくボブ・ゴーディオと巡りあう。
ボブがたまたま書いた「シェリー」という曲は、美しいメロディでフランキーのファルセットも効果的に響き、まさに天啓の歌曲。
「フォー・シーズンズ」と名前を変えた彼らは、あっという間に音楽シーンのトップに躍り出る。
しかし、リーダーのボブはチンピラ気分が抜けずに、いつしかグループは泥沼にハマりこんでいた・・・
とまぁこんなハナシ。
栄光と挫折と復活、といたって物語は判り易い。
で、こういうハナシには「努力」がつきものなのだろうけど、ほとんど「努力」らしきものはない。
フランキーのファルセットは才能だし、ボブのソングライター力も才能。
「シェリー」も天から降ってきたように出来ちゃうし、「フォー・シーズンズ」の名前も偶然の出遭い。
まぁ、うまくいくときは、こんなもの。
それをイーストウッド監督が小気味よく魅せていきます。
登場人物が画面に向かってナレーションめいたセリフでハナシを伝えるなど、舞台そのままの手法を使ったりしていますが、この小気味よさは、職人芸ですね。
(ただ、しゃべりすぎてウザッタイところがないこともないのですが)
イタリア系移民の仲間うちの物語なので、これをイタリア系のスコセッシが撮ったら、もっとクドくなりそうなんだけれど、イーストウッドはあまり踏み込まなくてサラリと描いています。
それが観ていて心地いいんですが、観てしばらく時間が経つと、引っ掛かりがない分、さらりと忘れてしまいそう。
うーむ、痛し痒し。
ここぞ!っていうシーンは終盤の楽曲「君の瞳に恋してる」のお披露目シーンと、エンディングタイトルの真正ミュージカルシーンぐらいかしらん。
ただ、エンディングシーンも5分程度しかなく(まぁ、カーテンコールだからこれぐらいの長さなんでしょうが)、ちょっと不満、もっとみせて欲しかった。
評価は★4つとしておきます。
<追記>
劇中、地味に4か所ばかりで流れるピアノとストリングの劇伴奏曲は、クレジットによればイーストウッドの息子カイルと他2名の手によるもの。
この音楽の使い方、結構うまくて、ここいらあたりもイーストウッド監督の職人技が光っています。
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2014年映画鑑賞記録
新作:2014年度作品:68本
外国映画44本(うちDVDなど 8本)←カウントアップ
日本映画24本(うちDVDなど 0本)
旧作:2014年以前の作品:131本
外国映画105本(うち劇場10本)
日本映画 26本(うち劇場 5本)
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この記事へのコメント
そうなんですよ、ミュージカルなんて紹介されていましたよね。
ホントに職人芸で巧いですね、内容そのものより巧さに感動する、というところもありましたが、それも映画の大きな魅力だと思います。
イーストウッド監督の場合その巧さがわざとらしさがない、というか、そこが才能なのでしょうね。
「イーストウッド監督の場合その巧さがわざとらしさがない、というか、そこが才能」というのは、まさにその通りですね。それを、かつては「職人監督」と呼んでいたのでしょう。
おっしゃる通り、イーストウッド監督は何を撮っても巧いですが、その巧さには心があって、深川栄洋監督にはそれがとち欠けているような気がしています。