『エスター』:おぉっと、悪魔の子じゃないのか・・・ @GyaO・無料配信

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2009年に劇場公開されたホラー映画『エスター』。
エスターというと、反射的に『水着の女王』エスター・ウィリアムズを思い出しちゃうりゃんひさですが、この映画、結構、観たかったんです。
公開時の惹句は「この娘、どこかが変だ。」
ふーむ、悪魔の子ダミアンの親戚かなにかかしらん、なんて勝手に思っていました。
さて、映画。

ケイトとジョンのコールマン夫婦には、一男一女がいる。
数年前に三人目を身ごもったが、結果は死産であった。
そのときの精神的ショックから、ケイトは一時期アルコール依存症になり、幼い娘を池で溺れかけさせるという事故まで起こしていた。

最近は、精神的にも落ち着いてきたケイトであったが、亡くした子どもに替わって、もうひとり子どもが欲しいという欲求は鎮まらない。
いや、精神の安定を得るためには、もうひとり子どもを育てるべきだ。

ケイトとジョンは、孤児院から9歳になる少女エスターを引き取り育てることとした。
エスターは歳の割には聡明で落ち着いており、それが彼女の魅力でもあったのだが、いつしかエスターは他人を掌中に入れて意のままにしようと本性をあらわしていく・・・

ふむふむ、1970年代前半に流行した『ナイト・チャイルド』『悪を呼ぶ少年』のような、残酷冷酷な少年サスペンスものかしらん。
それとも、『オーメン』のような「悪魔の子」映画かしらん。

えぇぇぇぇ、そのどちらでも、なかった! とは驚天動地、ビックリ仰天。

まぁ、児童虐待が問題になっている現状なので、子どもを悪者にするのは反発必至、ということでこの展開となったのだろう。

後半、エスターが悪逆の限りをつくすサスペンス描写はもとより、前半の子どもを喪ったケイトの心理描写がなかなかうまくできているあたりに注目したいところ。

脚本のデヴィッド・レスリー・ジョンソンは、この映画の後に、アマンダ・サイフリッド主演の『赤ずきん』を書いていて、こちらも機会があったら観てみたい。
監督のジャウマ・コレット=セラはスペイン出身で、ちょっと粘つくような演出は、お国柄かしらん。
この後、『アンノウン』『フライト・ゲーム』と撮っているが、さて、観るかよそうか、どうしたものかしらん。  

評価は★3つとしておきます。



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2014年映画鑑賞記録

新作:2014年度作品:87本(日韓合作1本あり)
 外国映画56本(うちDVDなど 9本)
 日本映画32本(うちDVDなど 0本)

旧作:2014年以前の作品:146本
 外国映画119本(うち劇場15本)←カウントアップ
 日本映画 27本(うち劇場 5本)
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この記事へのコメント

オーウェン
2024年01月21日 09:27
この映画「エスター」は、ロバート・ゼメキスとジョエル・シルバーが(趣味で?)作った「ダークキャッスル」レーベルの作品ですね。

ウィリアム・キャッスル作品のリメイクを手始めに、快調に低予算ホラーを製作してきたダークキャッスルですが、2006年の『リーピング』あたりで失速。

ガイ・リッチー作品を手がけるなど、若干の路線変更をしているようで、この作品もホラーというよりは、サスペンス・スリラー調の作品になっていますね。

監督は、2005年におなじくダークキャッスル製作の『蝋人形の館』を手がけたバルセロナ生まれのジャウム・コレット・セラ。
この作品の原題は「Orphan (孤児)」。

3人目の子供を流産してしまった夫婦が、その代わりにと孤児院から引き取った聡明な少女、エスターが、やがて家族を恐怖のどん底へと突き落とすのだった----------。

一見して善良だが、実は得体の知れない悪意を持った子供が、周囲を恐怖に陥れるというストーリーには、いろいろなバリエーションがあって、一方に666の『オーメン』みたいなオカルト・ホラーもあれば、全盛期のマコーレー・カルキンが主演した『危険な遊び』みたいなサスペンスもありますね。

恐らく、それを踏まえてのことだとは思うのですが、この作品の面白いところは、少女・エスターの悪意が、何に起因するのか、なかなかわからないこと。
要するに、いったいこの映画がどこに向かっているのかを我々観る者に悟らせないところにある。

彼女の周辺で起きる不幸な事故の数々、積みあがる死者の数。
それは偶然の事故か、事故を装った巧妙な殺人だろうが、そうだとしたら、何故なのか?
もしや、超自然的、悪魔的な何かが介在しているのか、とすら想像させられてしまいます。

孤児院の経営は、キリスト教系の団体だし、少女が隠し持っている古書が怪しいし、ポスターに描かれた少女の顔がオカルトだし。

この作品は、欧州出身の監督の感性ゆえか、映像が米国映画っぽくないんですね。
薄暗く、ひんやりとした湿っぽさ、どんよりとした陰鬱な空気。
何が起こっても不思議ではないような雰囲気。

撮影を手がけたジェフ・カッターのキャリアは浅いが、なかなか良い仕事をしていると思う。
演出も、ジャンルお約束の「脅かし」はあるが、全体としては騒がしくなく、じっくりとサスペンスを醸成していく。

『蝋人形の館』の時には、低予算娯楽ホラーのフォーミュラに則った仕事だったから、これほど達者な演出ができる監督だとは気が付かなかったが、なかなかの逸材ではないだろうか。

もちろん、さんざん観る者を翻弄しておいて、真相が明かされてみればありきたり、というのでは凡作の誹りを免れることはできないだろう。

最後の最後になって、初見のほとんど全てが、唖然とするようなアイディアが飛び出してくるところが高ポイントですね。
これがストーリー上、いわゆる「どんでん返し」というのではなく、積み上げてきたサスペンスを、違う次元に持ち上げる働きをしているところが尚素晴らしい。

初期段階の脚本では、エスターの過去について、もっと踏み込んだ説明がなされていたようだが、そこを端折った完成版には蛇足感もなく、観る者がいろいろなことを想像できる余地もあって、なかなか良いバランスになっていると思う。

エスターを演じるイザベル・ファーマンが圧巻。
低予算ジャンル映画といっても、こういう作品があるから侮れませんね。

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