『パリ3区の遺産相続人』:無自覚に愛に生きたひとのハナシ @DVD・レンタル

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昨秋ロードショウされた『パリ3区の遺産相続人』、DVDで鑑賞しました。
監督は、『いちご白書』の脚本家イスラエル・ホロヴィッツ
彼が書いた舞台劇を自身で脚色した初監督したものです。
予告編などでは、心温まるコメディのような雰囲気でしたが・・・
さて、映画。

無一文のニューヨーカー、マティアス・ゴールド(ケヴィン・クライン)が父親の遺産として受け取ったのは、古いフランスの小説と、金の腕時計と、パリの古いアパルトマン。
アパルトマンを売れば金になると勇んでパリへやってきたが、「ヴィアジェ」というフランス独特の不動産契約が結ばれていたものだった。
それは、買い手は格安の頭金で物件を手に入れられるかわりに、売り主に死ぬまで月払いの年金を支払い続け、かつ、売り主に物件に住むことを認めるものだった。
つまり、マティアスは相続したアパルトマンを手に入れることはできず、毎月金を支払わなければならない羽目になったわけだ。
そして、そのアパルトマンに住んでいたのは、御年92歳になるマティルド(マギー・スミス)とその娘クロエ(クリスティン・スコット・トーマス)だった・・・

というハナシは、一見、コメディのような雰囲気。
だけれど、話が進むうちに、かなり深刻に展開していきました。

マティアスの父親とマティルドは、かつて不倫の関係にあり、それを苦にしたマティアスの母親は自殺をし、マティアス自身も父親から愛されていなかった・・・

うーむ、どうにもこうにもシリアスだ。
60歳も近い中年男性が、両親の不倫話に悩むのもなんだが、とにかく少年期のトラウマから抜け出せない。

さらに、悪いことに、マティルドはマティアスの母親が自殺したことも知らず、マティアス一家を不幸にしたことに無自覚である。

たしかに、ひとを愛する権利はある。
しかし、他人を不幸にする権利はない。
そこのところを理解せず、無自覚に愛に生きるひとは、度し難い。

映画終盤で登場するマティアスのモノローグが印象的だ。
「ひとを無限に愛することは難しい。誰かを愛した分だけ、他のひとを愛する分が少なくなってしまう」
たぶん、この言葉は真実だろう、少し哀しいけど。

そんなシリアスで終われば、後味は悪くても優れた映画になったようにも思うが、マティアスとクロエが互いに傷をなめ合うような愛を見つけて、めでたしめでたしは、ちょっと甘すぎるような気がしました。

評価は★★★(3つ)としておきます。


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2016年映画鑑賞記録

新作:2016年度作品:51本
 外国映画34本(うちDVDなど 0本)
 日本映画17本(うちDVDなど 2本)

旧作:2016年以前の作品:63本
 外国映画50本(うち劇場 9本)←カウントアップ
 日本映画13本(うち劇場 5本)
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この記事へのコメント

ぷ~太郎
2016年07月19日 15:01
自我が確立しているのはいいが、暴走してエゴになってしまうのはいただけない。イギリス人から見たフランス人はこう見えるのでしょうか?でも、自我=エゴを貫き通したマティルドはある意味潔く見えないこともない。でも子供を不幸にしたのは自殺未遂常習犯の母親も同じ。不倫は勿論罪だけど、それを黙認した形にしてしまった夫婦の片割れはもっと嫌いです。
2016年07月20日 21:56
ぷ~太郎さん、コメントありがとうございます。
たしかに、不倫する側も罪だけれど、不倫を黙認するのも罪ですね。しかし、そんな夫婦も世間には多いのではありますまいか・・・

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