『ファイブ・イージー・ピーセス』:自尊も他尊も、自愛も他愛もできない男 @DVD
夏休み駆け込みDVD鑑賞の最後は、1970年製作の『ファイブ・イージー・ピーセス』。
その昔、ハイティーンの頃、ロードショウから数年経った名画鑑賞会の2本立てで観た際は、正直、さっぱり面白くなかった映画です。
ですが、どこかに引っかかるものがあるらしく、いつかは再鑑賞しようと数年前にDVDを購入していました。
さて、映画。
裕福な音楽一家に育った青年ボビー(ジャック・ニコルソン)は、いまは両親の元を離れて、石油採掘の現場で働いている。
ダイナーで働くレイ(カレン・ブラック)と付き合い、職場には友人エルトン(ビリー・グリーン・ブッシュ)もいるが、どうもしっくりいっていない。
そんなある日、父親が倒れたという報せを受け、ワシントン州にある実家に戻ることにした。
レイを途中まで連れていったが、実家には連れて行かず・・・
というハナシで、居場所のない青年の、根無し草のような生活を描いた映画。
多くは語られないが、ボビーの実家はかなり裕福、父親・兄・姉ともクラシックの音楽家だが、ボビーは才能はあるにはあるがクラシックに関心がない。
実家での居場所がなかった。
つねに居場所のない根無し草。
『スケアクロウ』の冒頭登場する転がる草、タンブルウィードのようなものになってしまった。
いつでも余所者。
実家に戻ったボビーは、兄の婚約者キャサリンに同じ余所者のにおいを感じて昵懇になるが、彼女から手厳しい一言を突き付けられてしまう。
「自分を愛せも、尊敬もできない人間が、他人から愛してほしいと求めるなんて、おこがましいことだ」と。
この映画の核である。
この後、ボビーは、病気のため無反応になってしまった、車いすの父親に縋り、声を押し殺して泣く。
そして、突如実家にやって来たレイを連れて実家を去るが、その道中、レイから「わたしほど、あなたを深く愛している女はいない」と告げられて愕然とし、古びたガソリンスタンドに彼女を残して去っていく・・・
自尊も他尊もできない男、自愛も他愛もできない男。
1970年当時の米国の閉塞感、遣る瀬無さ、自信のなさが全面から漂っており、アメリカンニューシネマの代表作といえよう。
再鑑賞した甲斐はあった。
評価は★★★★(4つ)としておきます。
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2016年映画鑑賞記録
新作:2016年度作品:72本
外国映画51本(うちDVDなど 8本)
日本映画21本(うちDVDなど 4本)
旧作:2016年以前の作品:85本
外国映画68本(うち劇場14本)←カウントアップ
日本映画17本(うち劇場 5本)
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