『僕と世界の方程式』:数学を通して、世界を観る @DVD・レンタル
ことし1月にロードショウされた『僕と世界の方程式』、DVDで鑑賞しました。
2014年製作のイギリス映画。
出演者も地味なので輸入されなかったのでしょうが、なかなかの佳作。
さて、映画。
自閉症スペクトラムの少年ネイサン(エイサ・バターフィールド)。
小学生の頃から数学に対する関心が高く、能力も高い。
が、他者とのコミュニケーションは不得手。
唯一の理解者だった父親は自動車事故で喪ってしまった。
そんな彼に、数学オリンピック出場のチャンスが巡ってくる。
オリンピック出場メンバー選出のための事前合宿が台湾であり、参加したネイサンは中国人の少女チャン・メイ(ジョー・ヤン)と知り合う・・・
というところから始まる物語。
自閉症スペクトラムを扱った映画はこれまでにも多いが、この映画は青春恋愛映画としての味付けが濃い。
夕食のセットメニュー番号やその中のエビボールの数が素数でなければいけないとか数字に異常にこだわりをみせる姿や、母親(サリー・ホーキンス)や数学教師のマーティン(レイフ・スポール)とコミュニケーションできない姿は、これまでの自閉症を扱った映画に登場したものと変わらない。
そんな彼が、台湾での合宿で飼変化していく。
数学にしか興味を示さなかった彼が、中国語をしゃべれるようになり、チームメイトの少女がピアノを弾くのをみて、突然ピアノを弾けるようになったりする。
さらに、中国語で、合宿中にペアを組むことととなったチャン・メイと、少ないながらも会話が出来るようになる。
むむむ、自閉症でそんなことがあるのかしらん。
しかし、映画ではそこのところを巧みに処理している。
ピアノを弾く際の音階は数学的な組み合わせ。
心地よいメロディ、ハーモニーには、数学的に考えれば、辿り着ける。
中国語は、英語の置き換え。
文法の語順は中国語と英語では大きな差がなく、単語を置き換えれば、ぎこちないかもしれないがしゃべれる。
英語では、直接、感情や考え方を伝えられないが、中国語という代数を使えば、解法できるというものだ。
数学を通して、世界を観る。
そうすれば、世界は意外とシンプルだった。
これが、ネイサンによる世界。
シンプル。
映画の前半で、数学教師だったか数学チームの指導者リチャード(エディ・マーサン)だったかがネイサンに言う。
「数式はシンプルで美しい」と。
数学を通して観たシンプルで美しい世界。
しかし、チャン・メイに対する気持ちに、解法はみつけられない。
「恋の方程式」とインターネットで調べてみても、そこに書かれた数式は、チンプンカンプン。
世界はシンプルなはずなのに・・・
そこで、最後に辿り着くのは、この映画の原題「X+Y」。
いやべつに、ネイサンがこの数式に辿り着くわけじゃないんだけど、観ている方としては、これに辿り着いてしまう。
女性と男性、X遺伝子とY遺伝子。
左辺が「X+Y」なら右辺は何か。
わかりきっている。
X+Y=I(自分)、X+Y=Love(愛)、X+Y=World(世界)、X+Y=You(あなた)。
ネイサンと世界の方程式は、きっとそんなところだ。
評価はオマケも込みで★★★★(4つ)としておきます。
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2017年映画鑑賞記録
新作:2017年度作品:76本
外国映画59本(うちDVDなど16本)←カウントアップ
日本映画17本(うちDVDなど 0本)
旧作:2017年以前の作品:50本
外国映画42本(うち劇場鑑賞11本)
日本映画 8本(うち劇場鑑賞 3本)
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この記事へのコメント
たまたまたこの作品の公開時に、自閉症スペクトラム絡みの作品が続いたのですが、どちらも数字に天才的に強い、という設定でした。
きっと、書かれていらっしゃるように、
>数学を通して、世界を観る。
そうすれば、世界は意外とシンプルだった。
と思える人物こそが能力を発揮できる世界が数学の世界なのでしょうね。
私なぞ、数学を通して見る世界は、どうしてこんなに…?と思う位チンプンカンプなものですが。
わたしも、数学は数IIBで落ちこぼれた口なので、数式の美しさ自体はわからないのですが、何事もシンプルなほど美しいとは感じるので、ネイサンにはきっと世界の美しさとシンプルさがみえたのだと思います。