『ルイの9番目の人生』:『怪物はささやく』に似たテイストの不思議な少年の物語 @ロードショウ・シネコ

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2018年、5本目の映画鑑賞は『ルイの9番目の人生』。
あまり意識しなかったけど、地元の映画館でロードショウ作品を観るのは、これが最初でした。
リズ・ジェンセンによる世界的ベストセラー小説『ルイの九番目の命』を、これまでホラー映画を中心に手掛けてきたアレクサンドル・アジャが監督したもの。
さて、映画。

9歳のルイ・ドラックス(エイデン・ロングワース)は、母親ナタリー(サラ・ガドン)と二人暮らし。
これまでの人生で事故に遭ったことは数知れず、死に直面したことも8回ある。
自分では「事故多発症」といっているが・・・
そんなルイの9歳の誕生日、別居していた父ピーター(アーロン・ポール)を交えて一家三人でピクニックに出かけたが、ルイは崖から海へ転落してしまう。
心肺機能が停止した状態で見つかったルイは、脂肪告知がされてから2時間後に奇跡的に蘇生する。
しかし、意識は戻らず、昏睡状態のまま。
主治医は小児昏睡の権威で名医アラン・パスカル(ジェイミー・ドーナン)。
ルイは、昏睡状態の中でも自分の意識はあり、過去の出来事に想いを馳せている・・・

というところから始まる物語で、ルイの無意識下の想いと現在の実時間の出来事が交互に描かれていく、というスタイルをとって映画は進んで行きます。

なので、この語り口についていけるかどうかが、まずひとつの難関。
時制はややこしく、その上、現実の出来事の多くも昏睡しているルイからみた現実という感じもするので、ルイの意識下なのかどうかが判然としないところもあります。

こういった少年のフィルターを通した、現実とも意識下のファンタジーがない交ぜになった映画といえば、近作では『怪物はささやく』を思い出すところ。
テイストは近いが、あちらは少年の成長譚というのが早い時点でわかるのでそれほど混乱もせず、もどかしくもないのだけれど、こちらは主人公の少年ルイが昏睡したままなので、もどかしい。

テイストが似ているといえば、映画冒頭からルイは正体不明の見知らぬ存在と語り合っているのですが、それが海底深くに棲む謎の生物というあたりも、似ているかもしれません。

とはいえ、着地点は『怪物はささやく』とは異なり、ルイの転落事故の顛末のほか、彼のいう「事故多発症」の真相も明らかになっていきます。

結末的には、「なるほど」とも思うのですが、同じようなネタはテレビドラマでもあったかもしれません。
ですが、そこへ至るまでの語り口には、はっとさせられますし、ルイとパスカル医師との精神感応など超常現象的な描写もあり、ここいらあたりは好き嫌いが分かれるかもしれません。

ルイ役のエイデン・ロングワースの不可思議な魅力は印象的、母親ナタリー役のサラ・ガドンもオールドファッションの美人の魅力があります。
彼女の存在によって、はじめ、物語が21世紀とは思えず、50年代ぐらいの話かと思いました。
(あ、もしかしたら、それぐらいの時代の設定の方が納得がいくかもしれません)

なお、本映画は元々『イングリッシュ・ペイシェント』のアンソニー・ミンゲラ監督が映画化を進めていたらしく、脚本は息子のマックス・ミンゲラが担当しています。

評価は★★★☆(3つ半)としておきます。

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2018年映画鑑賞記録

新作:2018年度作品:4本
 外国映画 3本(うちDVDなど 0本)←カウントアップ
 日本映画 1本(うちDVDなど 0本)

旧作:2018年以前の作品:1本
 外国映画 1本(うち劇場鑑賞 1本)
 日本映画 0本(うち劇場鑑賞 0本)
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この記事へのコメント

ぷ~太郎
2018年03月28日 16:25
少年の事故多発の原因は早々にわかるのだけれど、語り口や物語のテイストは好みの方です。時代設定をもっと昔にした方がよかったというのには賛成です。
りゃんひさ
2018年03月28日 21:49
ぷ~太郎さん、コメントありがとうございました。
少々難はあるものの好みの作品でした。

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