『プーと大人になった僕』: 会社での成功=幸せ、みたいな図式がどうも @ロードショウ・シネコン

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ディズニーキャラクターのなかで大のお気に入り、くまのプーさんの実写映画化『プーと大人になった僕』、ロードショウで鑑賞しました。
原題は「CHRISTOPHER ROBIN」。
100エーカーの森を卒業し、大人になったクリストファー・ロビンが主人公。
さて、映画。

1950年代、大人になったクリストファー・ロビン(ユアン・マクレガー)。
寄宿学校に入学して100エーカーの森を離れ、その後、第二次世界大戦に参戦し、いまは家庭を持つ中年男性。
勤める旅行鞄製造会社の業績は思わしくなく、責任者であるクリストファーは親会社から改革案の提案を迫られている・・・

というところから始まる物語だが、とにかく素晴らしいのは巻頭。

100エーカーの森での楽しい日々から別れ、その後のクリストファーを短い時間でみせるテンポの良さ。
プーたちぬいぐるみもイラストからアニメへ、そして実写となって登場する。
いやぁ、このオープニングだけで滂沱の涙。
トイ・ストーリー3』で描かれた、おもちゃたちとの別れを思い出しました。

で、大人になり、二進も三進もいかなくなったクリストファーのもとに現れたのがプー。
プーが言うには、「100エーカーの森から、仲間のみんなが姿を消した・・・」。
仕事で忙しいクリストファーはそんな場合じゃないのだれど、プーが導くままに100エーカーの森に戻っていきます。

傍から見ればただのぬいぐるみのプーに、真剣になって口論するクリストファーの描写は、右手にはめたビーバーのパペットが意思を持ったかのようになる映画『それでも、愛してる』のメル・ギブソンを彷彿をさせます。
そう、過剰なストレスからくる神経症に見えなくもない・・・

というあたりが、この映画、終盤にかけての腰が弱いところ。

過剰なストレスで壊れそうな中年男性が、子ども時代のよきことにより自分を取り戻し・・・と展開し、結果、ひょんなことから改革案を見つけ出して会社でも成功をおさめちゃう・・・と、現実世界での(いわゆる)成功パターンから抜け出ず、そこいらあたりが個人的には不満。

ひと昔(いや、ふた昔か)前なら、会社とは見切りをつけて、それでも幸せを見つける、というのが多かったように思える。
(ただし、会社で下劣な行動をした上司には鉄槌が下るのが当然)。
会社での成功=幸せ、みたいな図式が、どうも・・・ね。

ということで、後半、今風の常識的な映画になっちゃったのは残念だけれども、CGではなくパペットを多用したと思しきプーたちぬいぐるみは断然、魅力あり。

次回は「YOUNG CHRISTOPHER ROBIN」と題して、子ども時代のクリストファーとプーたちの物語を実写で描いてほしいものです。

評価は★★★☆(3つ半)としておきます。

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2018年映画鑑賞記録

新作:2018年度作品:59本
 外国映画48本(うちDVDなど 1本)←カウントアップ
 日本映画11本(うちDVDなど 0本)

旧作:2018年以前の作品:57本
 外国映画50本(うち劇場鑑賞11本)
 日本映画 7本(うち劇場鑑賞 1本)
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この記事へのコメント

ここなつ
2018年10月04日 17:04
こんにちは。
弊ブログにコメントも下さってありがとうございました。
プーと仲間たちの思い、動きなどがとても愛らしく、振る舞いも王道でした。
>会社での成功=幸せ、みたいな図式が、どうも・・・ね。
はい、これ何となく判ります。
ですが、クリストファー・ロビンもマデリンを食べさせていかなくちゃならないので(笑)。
ぷ~太郎
2018年11月20日 15:36
いいのか悪いのか微妙な感じでしたね。100エーカー
の森での別れ、その後のプーの寂しさはものすごくよく描かれていたと思うのですが、大人になったクリストファーが簡単に100エーカーの森に戻れてしまっていいの?という疑問はずっとつきまとっていました。誰でもあの樹の洞穴から入ってこれる森では全く意味をなさないのではないでしょうか。せめてクリストファーの娘だけが入れる森としなければいけないのでは。ぬいぐるみ達は可愛く、大人になったクリストファーに会いに来るプーという設定は
面白いものの、肝心の根底のお約束を反故にされているようで、落ち着きませんでした。

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