『在りし日の歌』:過去の政策は過ち。いまはしあわせ・・・ @DVD
ことし4月コロナ禍の兆しが見え始めたころに公開された中国映画『在りし日の歌』、DVDで鑑賞しました。
第69回ベルリン国際映画祭で最優秀男優賞と女優賞を受賞した作品です。
さて、映画。
1980年代、中国の地方都市で暮らすヤオジュン(ワン・ジンチュン)とリーユン(ヨン・メイ)夫婦。
ふたりは同じ工場で働き、ひとり息子シンシンと団地で暮らしていた。
同じ工場の団地には、同じ工場で働くインミン(シュー・チョン)とハイイエン(アイ・リーヤー)夫婦も暮らしており、ふたりの息子ののハオハオはシンシンと同じ日に生まれた縁から、互いを義兄弟、ひとつの家族のようにして幸せに暮らしていた・・・
といったところから始まる物語で、二組の夫婦のほか、ぽっちゃり系の女性と彼女の恋人を加えて、三組それぞれの軌跡を2010年代までの30年間が描かれます。
一人っ子政策がとられる中、リーユンが第二子を妊娠、工場で風紀取締係に担うハイイエンは、党の方針に従って、強制的にリーユンに堕胎させる。
その数年後、シンシンは、ハオハオやほかの子どもたちと沼で遊ぶ中、溺死してしまうという事件が起こるが、リーユンは先の堕胎手術により妊娠できない身体になっており、ヤオジュンとリーユンは養子を迎えて、工場を離れていく・・・
といったエピソードが、時間軸を行ったり来たりしながら描かれていきます。
個人的には、この時間を行ったり来たりの構成は煩わしく、時間経過どおりに年代順に描いたほうがよかったと思いますが、過去の政策を批判的に描いているので、幾分わかりづらくしておかなければ、党当局から製作の許可が下りなかったのかもしれません。
ま、現在では、一人っ子政策は失敗だったと、党執行部も認めているので、一人っ子政策が生んだ庶民への不幸は、現在の中国でも描くことは問題はないでしょうが。
と、息子シンシンを失ったヤオジュンとリーユンは不幸のどん底に突き落とされるわけですが、そんな中、寂しさを紛らわすためか、ヤオジュンは、インミンの妹モーリー(チー・シー)と急接近し、ついにはモーリーは妊娠。
ヤオジュンにのみその事実を伝えたモーリーは、米国へ旅立っていきます。
(このエピソードは、終盤、2010年代のパートの微笑ましい結論の伏線になっています)
養子を迎えたものの、その養子の子どもも成長するに従いグレてしまい、ヤオジュンとリーユンを離れてしまい、あまり幸せでない暮らしをしていたふたりのもとに、ハイイエンから報せが届きます。
もう先の長くないハイイエンが死地を目前に、最期にヤオジュンとリーユンに会いたいといい、二人を呼び寄せる・・・
というのが2010年代のエピソード。
過去の一件がずっと心の底に残っていたハイイエン、そして、もうひとつ、ハオハオの心に深く刻まれていた思い・・・
それらが吐露され、その両方を赦すヤオジュンとリーユン。
(知っていながら、知っていたとはハオハオには告げないあたりが泣かせます)
最終的には、しあわせな結末を迎える2010年代のパートは、時間の行き来は、ほぼありません。
(先に書いた「知っていながら・・・」のシーンだけが少し描かれるだけで、この過去シーンは効果的でした)
時間の行き来もなく、しあわせな結末を迎える2010年代のパート。
それは、現在へと続く道すじ。
過去、一人っ子政策という誤った政策をとったけれども、現在の中国はしあわせである・・・というような感じも受けるのですが、それは穿った観方なのかしらん。
評価は★★★☆(3つ半)としておきます。
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2020年映画鑑賞記録
新作:2020年度作品: 81本
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日本映画21本(うちDVDなど 4本)
旧作:2020年以前の作品: 69本
外国映画60本(うち劇場鑑賞 8本)
日本映画29本(うち劇場鑑賞 4本)
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この記事へのコメント
昔の私なら、見ていたと思うけれど。(笑)
うーん、こちらは機会があったら見てみたいですな。
こちらはどうかな?
機会があれば観てみてね。
確かに年代順に描いた方がわかりやすく、心に沁みこみやすいと思うのですが、どこまで中央政府を意識していたのかはわかりませんね。
ヤオジュンを演じた俳優さんが知人に似ており、浮気をするところも
同じで、違った意味合いでも楽しめました。
>ヤオジュンを演じた俳優さんが知人に似ており、浮気をするところも同じで
・・・って、ははは、笑っていいものかどうか・・・