『ウルフウォーカー』:この絵が、こう動くのか!という驚きのアニメーション @ロードショウ
2021年最初の映画館での鑑賞は『ウルフウォーカー』。
昨年10月末にロードショウ開始、その後、2ヶ月以上ロングランしているアイルランドとルクセンブルク合作のアニメーション作品。
鑑賞したのは正月三が日中です。
三が日明け後、新型コロナの新規感染者数に一喜一憂していて、レビューを書く気力が失せておりました。
さて、映画。
中世アイルランドの森にほど近い小さな町の出来事。
幼い娘・ロビンは父親とともにイングランドからやってきた。
父親の仕事はオオカミハンター。
町を支配したイングランドの領主のもと、森を切り拓くための仕事である。
父の仕事にあこがれるロビンは、父の言いつけを守らず家を抜け出し、オオカミハントの仕事をする父の後をつけ、少女メーヴと出会う。
メーヴはオオカミを統べる者・ウルフウォーカーの数少ない一族のひとりで、魂はオオカミ、眠っている間だけ魂がオオカミとしての実体を持ち、活動することが出来る。
そして、メーヴと仲良くなったロビンは、彼女から、母親が行方不明になったと聞かされ・・・
といったところから始まる物語で、物語の骨子もさることながら、アニメーションの醍醐味を味わうことが出来る、傑作ともいえる作品。
とにかく、こういう絵が動くのか、と感嘆させられます。
森の中の描写は曲線主体で、木洩れ日までも繊細に表現されている。
対して、町の描写は、直線主体のデザインされたもの。
時折、俯瞰描写と横からみたフラット描写が組みあわされて、ハッとするような構図も登場します。
そして、人物たちの躍動感。
ウルフヴィジョンと名付けられた、オオカミ視点での画づくりもあります。
(このウルフヴィション、古い映画ファンなら、『ウルフェン』という映画を思い出すかもしれません)
メーヴに咬まれたロビンも、自分では知らないうちにウルフウォーカーと化し、行方知れずだったメーヴの母親を見つけますが、イングランドから来た領主はオオカミを敵視し、最終的には森を焼き払い、オオカミたちの殲滅を図ろうとします。
この後半の描写は、イングランド兵士たちが極度にデザイン化されてい、かつ、三面分割のスプリットスクリーンなども用いられて、すさまじい迫力です。
個人的には恐ろしく感じましたし、たぶん、自分が幼ければ、泣き出していたかもしれません。
(この後半の描写は、ユーリ・ノルシュタインの初期作品を彷彿とさせます)
最終的には、イングランドの領主は、キリスト教の神に祈りながら敗北していきますが、森の大半は焼き払われ、オオカミにとっての全面勝利ではない結末を迎えます。
イングランド領主の、アイルランド住民無視なども含め、要所要所にアイルランド的価値観が滲みだしています。
ま、そんな歴史的背景などがわからなくても、「この絵が、こう動くのか!」というアニメーションの驚きは充分に感じることができる「傑作」だと感じました。
なお、英語版でのロビン役の声は『アガサ・クリスティ ねじれた家』『マイ・ブックショップ』のオナー・ニーフシー。
子役では最注目株です。
評価は★★★★★(5つ)としておきます。
------------------
2021年映画鑑賞記録
新作:2021年度作品: 0本
外国映画 0本(うちDVDなど 0本)
日本映画 0本(うちDVDなど 0本)
旧作:2021年以前の作品: 2本
外国映画 2本(うち劇場鑑賞 1本)←カウントアップ
日本映画 0本(うち劇場鑑賞 0本)
------------------
この記事へのコメント
絵そのものもすごいのですが、構図もすごい。テーマの底に横たわるものもすごい傑作アニメですね。
京都シネマでの再上映があればよいのですが。
ポスターはアールヌーヴォー様式のような感じがします。
劇場での鑑賞をお薦めします。ポスター、たしかにアールヌーヴォー風ですね。