『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』:ある種の宗教臭が普遍的物語の邪魔をしているに感じて @ロードショウ

サウンド・オブ・メタル.jpg

昨年の米国アカデミー賞の音響賞と編集賞を受賞した『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』、ロードショウで鑑賞しました。
Amazonオリジナル映画で、先に配信されているけれども、Amazonプライムビデオの会員ではないので観ていませんでした。
さて、映画。

メタルバンドのドラマーのルーベン(リズ・アーメッド)は激しい演奏のせいかどうか、突発性難聴に襲われてしまう。
原因は不明。
器具を埋め込む手術をすればいくらか聞こえるようになるかもしれないが・・・と言葉を濁す医者。
しかし、手術費用は高額。
恋人で一緒にバンドを組む恋人ルー(オリヴィア・クック)は、伝手を頼って、難聴者のコミュニティに連れていくが、コミュニティの主催者ジョー(ポール・レイシー)は、聾や難聴をハンディとして捉えず、その状態を受け容れての生活をルーベンに勧める。
ルーと離れてコミュニティで暮らすルーベンであったが、現実を受け容れることはなかなか難しかったが、コミュニティでの居場所・立場が出来たことで、少しずつ現実を受け容れられるようになっていく。
しかし、手術をすれば・・・という思いは立ちがたく・・・

といった物語で、タイトルの「サウンド・オブ・メタル」には3つの意味が掛けられているように思えました。

ひとつめは、主人公が演奏するバンドのメタルサウンド。
ふたつめは、難聴に襲われ、聞こえづらくなってきたときの、ノイズ音。
みっつめは、手術後に器具を通して聞こえる金属的な歪んだ音。

それらみっつの音質を見事にサウンド化しており、アカデミー賞音響賞受賞もなるほどと肯けます。

映画的には、ある種の宗教色を感じました。

ひとつは、ジョーが主催する難聴者のコミュニティの描き方で、教会が支援しているということが告げられますが、ジョー自身が牧師のようにみえるよう演出しています。
牧師のような様相ではないのですが、デニムシャツの下に着ている白いアンダーシャツが襟元から覗いており、それが牧師のホワイトカラーのようにも見えます。
また、難聴はハンディキャップではない、と言いつつも、健聴者を排除していることから、逆に排他的であり、他の宗派を受け容れないキリスト教の頑なさとも重なってきます。

もうひとつは、最終盤。
手術しても元のように聞こえず失望したルーベンに教会の鐘の音が鳴り響くのですが、その歪んだ音に耐え切れなくなった彼は、手術で取り付けた器具を外し、静寂を選び取ります。
キリスト教会の鐘は、イスラム教徒のルーベン(明確にそうだとは描かれていませんが)を救ってくれないように読み取れます。

ルーベンを救うのは、静寂を選んだ自分自身・・・

そう考えると、かなり遣る瀬無くなるラストですね。

評価は★★★☆(3つ半)としておきます。

追記 『サウンド・オブ・サイレンス』というタイトルでもよかったかもしれませんね。

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2021年映画鑑賞記録

新作:2021年度作品:64本
 外国映画37本(うちDVDなど16本)←カウントアップ
 日本映画27本(うちDVDなど10本)

旧作:2021年以前の作品:85本
 外国映画60本(うち劇場鑑賞 4本)
 日本映画25本(うち劇場鑑賞 5本)
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