『皮膚を売った男』:アート映画ならぬ、アッと映画ですね @ロードショウ

皮膚を売った男.jpg

昨年の東京国際映画祭で話題だった『皮膚を売った男』、ロードショウで鑑賞しました。
チュニジア、フランス、ベルギー、スウェーデン、ドイツ、カタール、サウジアラビアの合作映画です。
なんとも国際色豊かですね。
さて、映画。

内戦が続くシリア。
恋人アビール(ディア・リアン)と一緒に乗った列車の中で浮かれたサム(ヤヤ・マヘイニ)は、そのときの発言がもとで当局から政治犯としてにらまれてしまう。
しかたなくレバノンへ脱出したが、アビールへの想いは募るばかり。
一方のアビールは、身の安全を心配した両親から、国外避難の道として外交官事務補佐の男と結婚させられ、欧州へ移ってしまった。
そんなある日、日々の食い扶持にも困ったサムが潜り込んだ芸術家ジェフリー・ゴッドフロイ(ケーン・デ・ボーウ)のエキジビジョンの場で、そのジェフリーから奇妙な申し出をされる。
それは、サムの背中を売ってほしいというもの。
サムの背中をキャンバスとしてアートタトゥーを彫る、サムは美術品の一部となり、大金とヨーロッパへの移住が可能となるというもの・・・

といったところからはじまる物語で、アート界で実際にあった事件にインスパイアされた監督のカウテール・ベン・ハニアが脚本も書いて映画化したもの。

発想自体も面白いが、実際にアートとしてあったというのだから驚きです。

映画は、アートというものへの皮肉な視点によって、物語自体に潜むヒューマニティ的な要素すらシニカルに描いていきます。
こう書くと、なんだか堅苦しい映画のように思えるけれど、映画の底に流れているのはサムとアビールのロマンス要素であるので、シニカルでありながらも、ある種のぬくもりのようなものを感じます。

映画は後半、アート作品と化したサムはオークションに懸けられ、そのオークションの場でとんでもないことをしでかします。
ここは、ヨーロッパにおける中東人への偏見がひしひしと感じられます。

中東の民といっても全員が全員、イスラム教徒ではなく、この映画でもアビールは髪を覆い隠していないところから察するに、ふたりはキリスト教徒かもしれません。
(実際、シリア人の1割ほどはキリスト教徒)。

最終的に、サムとアビールは故郷シリアのラッカに戻るのだが、サムはISに捕らえられてしまい・・・
と、ここから先は、アッという展開。

ちょっと人を食ったような決着にはニヤニヤしました。

アート映画ならぬ、アッと映画ですねぇ。

評価は★★★★(4つ)としておきます。

追記>
芸術家ジェフリーの作品をプロデュースする女性ソラヤ役の女優さん、モニカ・ベルッチに似ているなぁ、と思っていたら、あらビックリ。
モニカ・ベルッチでしたわぁ。

------------------
2021年映画鑑賞記録

新作:2021年度作品:66本
 外国映画39本(うちDVDなど16本)←カウントアップ
 日本映画27本(うちDVDなど10本)

旧作:2021年以前の作品:85本
 外国映画60本(うち劇場鑑賞 4本)
 日本映画25本(うち劇場鑑賞 5本)
------------------

この記事へのコメント

2021年12月04日 22:17
こんばんは。
ご覧になった報を受けてすぐにお邪魔したのですが、例のコメントの書き込みができない件で、なかなか足跡を残せませんでした。すみません。
これは衝撃的な作品でしたね。人権のことを考えさせられました。背景には戦乱があるのですよね。でも確かに、それを堅苦しくなく(ある種皮肉っぽく)見せている手腕はなかなかだと思いました。
りゃんひさ
2021年12月05日 22:53
>ここなつさん

欧米では、第三諸国のひとびとには人権などないと思っているのでしょうね。
映画は、考えるべき問題をエンターテインメントに昇華していて、驚きの映画でした。

この記事へのトラックバック