『アリゾナ・ドリーム』:監督の作家性を底の方で感じる不思議な魅力の作品 @DVD

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1992年公開の『アリゾナ・ドリーム』、買い置きDVDで鑑賞しました。
監督はエミール・クストリッツァ
『パパは、出張中!』で1985年のカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞したのち、1989年の『ジプシーのとき』を挟んで、フランス資本で撮った作品です。
本作でも、1993年ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞しています。
さて、映画。

米国ニューヨークの漁協局で働く青年アクセル(ジョニー・デップ)。
ニューヨークベイの魚量調査のため、日々、魚を獲る生活をしている。
そんな中、キャデラックの中古車販売業を営む叔父レオ(ジェリー・ルイス)の結婚式のため、故郷アリゾナへ戻ってくる。
アリゾナからアクセルを迎えに来たのは俳優志望のポール(ヴィンセント・ギャロ)。
アリゾナに着いたアクセルが対面した叔父の結婚相手は、アクセルとそう年の違わない若い東欧娘ミリー(ポーリーナ・ポリスコワ)。
愉快な叔父のレオは、かつてのアクセルのヒーローだった・・・

といったところからはじまる物語で、アクセルはレオの勧めもあり、レオの中古車販売店で働くことになります。

その後。客として現れたのが、エレイン(フェイ・ダナウェイ)とグレース(リリ・テイラー)の母娘。
エレインは、グレースの父の再婚相手だったが、グレースへのひどい仕打ちに見かねて7,グレースの父を射殺した過去を持っており、空を飛ぶことに異常な情熱を持っている。
グレースはグレースで、神経症的なところがあり、周囲とはあまり打ち解けようとしない。
年増エレインの色香に絆されたアクセルは、荒野の只中に建つエレインの家に同居することになり・・・

と展開するのだけれど、物語はとりとめがない。

とりとめのない物語はエミール・クストリッツァ監督の特徴のひとつでもあるのだけれど、いつもならば、そのスラブ臭とでもいうべきものにちょっと辟易するところもあるけれど、本作では米国アリゾナの乾いた風景のなかで繰り広げられる、一筋縄ではないかぬ人々の話は、予想外に興味が惹かれました。

タイトルには「ドリーム」とついているが、どちらかといえば、ナイトメア(悪夢)のような、希望の感じられない物語ばかりで、俳優志望のポールが引き合いに出す映画も『レイジング・ブル』『北北西に進路を取れ』『ゴッド・ファーザー』で、アメリカン・ドリームというのとは少し違っている。

とりとめのないエピソードを繋ぐのが、アラスカでのオヒョウの話だけれど、右側に目の寄ったオヒョウがアリゾナの砂漠の上を泳ぎ回るのも、その浮遊感、自由さとは相反して(なのかどうかわからないが)、どこにも根のない、根無し草的な自由な感じがしました。
これは、ユーゴスラビアという祖国に確固たる根のある(そして、その祖国は崩壊して消えてしまった)エミール・クストリッツァが感じる「ドリーム」なのかもしれません。

ということで、とりとめない映画ではあるのですが、クストリッツァ監督の作家性は底の方で感じることができる、不思議な魅力のある作品でした。

評価は★★★★(4つ)としておきます。

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2021年映画鑑賞記録

新作:2021年度作品:72本
 外国映画45本(うちDVDなど17本)
 日本映画27本(うちDVDなど10本)

旧作:2021年以前の作品:112本
 外国映画82本(うち劇場鑑賞 8本)←カウントアップ
 日本映画30本(うち劇場鑑賞 8本)
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この記事へのコメント

じゃむとまるこ
2021年12月31日 14:49
こんにちは。
この映画は映画館で観て、のちも度々DVD鑑賞しています、根無し草的寄る辺ない人の哀しさみたいなものを感じます。
特に好きな映画です。
りゃんひさ
2022年01月01日 23:28
>じゃむとまるこさん

あまり評判が良くなかったので、ちょっと心配しながら観はじめましたが、クストリッツァ監督作品ではいちばん好きかな、と感じました。

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