『ジャスト6.5 闘いの証』:緊迫感のある力作。イランと日本の裏での繋がりも衝撃 @配信

ジャスト65闘いの証.jpg

昨年1月公開のイラン映画『ジャスト6.5 闘いの証』、Amazonの配信レンタルで鑑賞しました。
先に観た『ウォーデン 消えた死刑囚』と同時期に公開されていましたね。
さて、映画。

現代のイラン、街中は薬物中毒者で溢れかえっている。
イラン警察で麻薬撲滅チームを率いるサマド(ペイマン・モアディ)のターゲットは、組織の元締めナセル・ハクザド。
しかし、ナセルの顔を知る者はおらず、末端の売人を手始めに、貧民街での一斉検挙と、強引な手法で関係者を連行していく。
麻薬の拡大は凄まじく、貧民層では女子供に至るまで麻薬に手を染めていない者はいないくらいだ。
元婚約者の女性の証言からナセルの暮らす高級マンションのペントハウスに踏み込んだサマド隊だったが、ナサルと思しき男(ナヴィド・モハマドザデー)は睡眠薬を多量に服用して、ジャグジーでぐったりしていた・・・

といった物語で、ここまでが前半。映画としての勢いは、この前半が凄まじい。

関係者を逮捕していくサマドは鬼の形相で、短いカットを繋ぎ、画面を通して市民の至る層に麻薬が広がっているさまが描き出される。
空港で検挙される密売人たちの証言から、彼らの大口顧客は日本のヤクザであり、イランの麻薬汚染の一端を担っているのが日本社会というのも心に響く。
この大口顧客=日本人というのは後半でも登場し、組織の黒幕のひとりが「ジャポネ・レザ」と呼ばれる日本ビジネスの窓口のようだ。

このような描写があることから、本作は、2019年東京国際映画祭で、最優秀監督賞と最優秀男優賞を受賞しているにもかかわらず、小規模配給で大手シネコンでは上映されなかったのだろう。

さて、中盤以降は、留置所に収監されたナサルと呼ばれる男とサマドとの静かなる攻防になるのだが、前半と比べると、いささか勢いは停滞気味。
警察署内という限定空間でやり取りされるので、勢いが削がれるのは仕方がないか。

この警察署内でも麻薬汚染の凄まじさは描かれ、留置場には次々と逮捕者が連行されてくる。
そんな中には、12歳の少年の姿もあり、少年は父親から保身のための偽証を強要されたりする。

みな、保身のために証言や態度をころころと変えるあたりは、イラン社会の縮図のようにも見えます。

終盤は、「ジャポネ・レザ」の麻薬製造工場の急襲と相成るのだが、牧場の古びた倉庫の地下で行われている麻薬製造は白日に晒されることなく、爆発によって消し飛んでしまう。
米国製のエンタメ作品ならば、まちがいなく、ここで銃撃戦が繰り広げられるはずだけれど。

最後は、ナサルと呼ばれた男の過去が吐露され、彼が他の犯罪者とともに絞首刑になるのだが、彼の心情に寄っていくあたり、イランでは同情や共感があったのだろうと想像します。
つまり、それだけ、彼の過去と同じく、貧しく、社会の底辺から這い上がれない人々が多いということです。

タイトルの「ジャスト6.5」というのは、最後の最後に、「これまで麻薬中毒者は100万人だったが、ナサルが逮捕されてから650万人になった」「2000万人よりマシだと思え、とでもいうのか」という台詞から来ており、反語的な語感で使われているのだが、タイトルとしてはわかりづらいですね。
(Google翻訳で原題「METRI SHESH VA NIM」を翻訳すると「6m半」と出たのだが、「650万」の意味でしょうね)
タイトルとしては、『ナサルと呼ばれた男』『ジャポネ・レザ』という組織側の人名を使った方が良かったかも。
また、刑務所暴動映画のようなポスターもマイナス。

役者陣はいずれも力演。
ペイマン・モアディは、アスガー・ファルハディ監督『別離』の主演。
ナヴィド・モハマドザデーは、『ウォーデン 消えた死刑囚』の主役・刑務所長役のひと。
ホントは、こんなに若かったんですね。

評価は★★★☆(3つ半)としておきます。

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2022年映画鑑賞記録

新作:2022年度作品:18本
 外国映画10本(うちDVDなど 1本)
 日本映画 8本(うちDVDなど 0本)

旧作:2022年以前の作品:44本
 外国映画36本(うち劇場鑑賞 7本)←カウントアップ
 日本映画 8本(うち劇場鑑賞 1本)
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この記事へのコメント

2022年04月25日 17:46
こんにちは。
こちらは面白かったし、力作でしたねぇ。役者さんたちの凄まじさもありました。
警察内部での力関係、人間関係も面白く描かれていました。
こういう作品広く知られるといいんですけどね。
りゃんひさ
2022年04月25日 22:46
>ここなつさん

コメントありがとうございます。力作でかつ面白い。これまでのイラン映画のイメージを覆す映画でしたね。

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