『林檎とポラロイド』:林檎を齧ると、妻のことを思い出せますか @DVD

林檎とポラロイド.jpg

ことし3月に公開された外国映画『林檎とポラロイド』、DVDで鑑賞しました。
製作は、ギリシャ・ポーランド・スロベニアの合作。
ギリシャ映画というのは珍しい。
どんな映画なのかしらん、という感じですね。
さて、映画。

記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する、いつの時代か定かでない世界。
主人公の男性(アリス・セルヴェタリス)は、ごく最近、愛する人を喪ったようだ。
花を手向けに出かけた帰りのバスの中で、突如、記憶を失い、病院に運ばれてしまう。
記憶喪失の治療のプログラムの名は「新しい自分」。
毎日送られてくる指令もどきの内容(それもカセットテープで送られてくる!)に沿って、小さな自転車に乗ったり、ホラー映画(『悪魔のいけにえ』だ!)を観るなどしていた。
淡々と指令もどきを実行するうち、ある若い女性(ソフィア・ゲオルゴヴァシリ)と知り合うが、指令の内容は不道徳極まりない内容だった・・・

といった物語で、終盤、ある老人の死をきっかけに主人公の男性は記憶を取り戻す(ようにみえる)のだが・・・と展開して終わる。

「記憶を取り戻す(ようにみえる)」と書いたのは・・・

<<ここからネタバレ>>

記憶を取り戻すもなにも、主人公はもともと記憶喪失の奇病に罹患していないから。

はじめ、わたしは、主人公は記憶喪失になった、と思ってみていたのだけれど、観終わったのち、一緒に観ていた妻が「あれはハナから記憶を失っていないよね」と言い出したものだから、慌てていくつかのシーンを見返しました。
(こういう時はDVD鑑賞は便利ですね)

確かに、主人公は記憶を失っていない。
病院に運ばれてプログラムに参加してすぐに、彼のもとを訪れる犬の名前を呼び、知人の姿を見つけると慌てて姿を隠している。
正気の証拠。

とすると、主人公の意図は何か?
謳い文句「悲しい記憶だけ失うことはできませんか?」にあるとおり、「妻が死んだ」という悲しい記憶だけ消したい、ということ。

しかしながら、そんな都合のいいことなどできるはずもなく、終盤、死んでしまう老人は、その死を皆から忘れ去られ、結果、存在も忘れ去られてしまうことに主人公は気づくのです。

妻の死を忘れることは、妻の存在も忘れること。

ということで、忘れないための食材=林檎を、主人公は齧るわけですね。

林檎=知恵の実。
知恵は記憶と同値。
そういう意味でのメタファーでしょうね。

ジャンル分けが難しい類の作品で、SFともいえるし、ペーソスを含んだコメディともいえるでしょう。

評価は★★★☆(3つ半)としておきます。

------------------
2022年映画鑑賞記録

新作:2022年度作品:56本
 外国映画31本(うちDVDなど 6本)←カウントアップ
 日本映画26本(うちDVDなど 0本)

旧作:2022年以前の作品:77本
 外国映画59本(うち劇場鑑賞12本)
 日本映画18本(うち劇場鑑賞 3本)
------------------

この記事へのコメント

2022年11月22日 09:02
こんにちは。
ギリシャ出身の監督の作品って、ヨルゴス・ランティモスもそうですが、摩訶不思議な雰囲気がありますよね。
本作も独特の雰囲気があって、なかなかお目にかかれない感じのものだと思いました。
りゃんひさ
2022年11月23日 12:31
>ここなつさん

コメントありがとうございました。
ギリシア的(といっても、よくわかっているわけではないですが)な哲学的な感じがしました。
西ヨーロッパの映画ともまた違った感じで。

この記事へのトラックバック