『大いなる幻影 Barren Illusion』:消失した未来の日本の、消失した恋人の虚無的な物語 @DVD
1999年製作の黒沢清監督作品『大いなる幻影 Barren Illusion』、DVDで鑑賞しました。
散歩途中に立ち寄った図書館に並んでいたものですが、この手の作品が図書館にあるのは珍しい。
たぶん、ジャン・ルノワール監督作品『大いなる幻影』と誤ったんだろうなぁ、などと想像。
さて、映画。
20世紀末の喧騒を超えた2005年。
屋外には大量の花粉が舞い、自殺は頻繁に起こり、どことなくけだるく静かな日々が続いている。
ハル(武田真治)とミチ(唯野未歩子)は恋人同士のようだが、ときめきのときは過ぎ去り、恋慕の情も消え去りかかっている。
いや、ハルの存在すら消え去りかかっており、彼はときどき(物理的な)存在すらも薄くなっている・・・
といった物語で、『CURE』や『ニンゲン合格』、『ドッペルゲンガー』などを撮っていたころの黒沢清作品には虚無的な雰囲気が漂う。
本作品もその系列の作品で、映画美学校の生徒たちをスタッフに交えた、なかば自主映画的位置づけのローバジェット作品。
幾度か登場するバーは、映画美学校のロビーに簡便なセットを組んで(テーブルとか椅子とか、普段から置いてあるものを利用して)照明を工夫して撮られていますね。
つかみどころのない感触の映画なのだが、役所の窓口業務を淡々とこなすミチが海外逃亡を企てても脱出することができず、壊れているコピー機でコピーしようとしていたのが世界地図に日本が消失しているとか、終盤になって「なるほど、消失した日本が舞台の、消失した人々の物語。すべては消失したハルとミチの幻影・・・」なのかと得心しましたが、映画はその後しばらく続き、ハルが頻出していた強盗事件の一味だったとか、ゴダールの『勝手にしやがれ』からの悪影響のような最終盤は拍子抜け。
惜しいような、惜しくないような・・・
老成した黒沢清にリメイクしてほしい類の映画でした。
ということで、評価は★★☆(2つ半)としておきます。
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2022年映画鑑賞記録
新作:2022年度作品:60本
外国映画33本(うちDVDなど 7本
日本映画27本(うちDVDなど 0本)
旧作:2022年以前の作品:78本
外国映画59本(うち劇場鑑賞12本)
日本映画19本(うち劇場鑑賞 3本))←カウントアップ
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