『夜、鳥たちが啼く』:舞台が函館でないのが致命的かな @ロードショウ

夜、鳥たちが啼く.jpg

『そこのみにて光り輝く』などの佐藤康志の小説の映画化『夜、鳥たちが啼く』、ロードショウで鑑賞しました。
監督は『アルプススタンドのはしの方』などの城定秀夫、脚本は同じく佐藤康志小説『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』を脚本化してきた高田亮
さて、映画。

若くして大きな賞を受賞して期待された作家の慎一(山田裕貴)。
悶々と暮らす中、離婚したばかりの裕子(松本まりか)が幼い息子を連れて身を寄せてくる。
裕子は、慎一の仕事先の先輩の元妻。
離婚の原因には、少なからず慎一も関係していた。
慎一は、元カノと暮らしていた平屋の長屋の一室を裕子母子に譲り、自身は離れのプレハブで生活することにし、これまでどおり自身を題材に私小説を書き続けようとするのだが・・・

といったところからはじまる物語で、タイトルの「夜に啼く鳥たち」は発情期だということが冒頭で示されます。

ふーん、ロマンポルノ的なところに決着しそうだねぇ、と冒頭で気づきます。

案の定、悶々とする慎一を知ってか知らずか、裕子は夜な夜な孤独を満たすべく、子どもを寝かしつけたあと、男漁りに繰り出し、さらに慎一を悶々とさせます。

ますますロマンポルノだ。

で、ロマンポルノならば、そんな裕子の男遍歴を10分間隔でみせるのだけれど、行儀のいいこの映画ではそこは後のお楽しみと言わんばかりに描かない。

ありゃりゃ、こちらも悶々とするねぇ。

で、まぁ、最大の見せ場は裕子と慎一のカラミなんだけれども、あれれ、これはロマンポルノじゃなく、佐藤康志の小説の映画化だったね。

佐藤康志の小説の映画化作品のいちばんの魅力は、登場人物の煩悶とする姿だけではなく、北海道函館の閉塞感とも絶望感ともいえる風景の魅力で、閉塞していながらも空も道路も広く、人間のちっぽけさが鮮明となるところなのだが、本作は舞台を東京郊外にしているので、ただただ閉塞感が強く、悶々とするだけ。

舞台設定が映画の与える影響の大きさを感じますね。

ということで、本作では、ただただ悶々とするだけの映画になってしまい、途中から、「なんだかぁ」と思わざるを得ませんでした。

とはいえ、つまらないわけではないのですが、個人的には魅力を欠いた一編となったかなぁというのが正直なところです。

評価は★★★(3つ)としておきます。

------------------
2022年映画鑑賞記録

新作:2022年度作品:74本
 外国映画38本(うちDVDなど 8本)
 日本映画36本(うちDVDなど 0本)←カウントアップ

旧作:2022年以前の作品:84本
 外国映画64本(うち劇場鑑賞13本)
 日本映画20本(うち劇場鑑賞 3本)
------------------

この記事へのコメント

2022年12月28日 17:42
こんにちは。

>佐藤康志の小説の映画化作品のいちばんの魅力は、登場人物の煩悶とする姿だけではなく、北海道函館の閉塞感とも絶望感ともいえる風景の魅力で、閉塞していながらも空も道路も広く、人間のちっぽけさが鮮明となるところなのだが、本作は舞台を東京郊外にしているので、ただただ閉塞感が強く、悶々とするだけ。

これで、腑に落ちずに悶々としていた部分が氷解しました。
ありがとうございます!
りゃんひさ
2022年12月31日 15:14
>ここなつさん

お役に立ててなによりでした。