『帰らない日曜日』:ヴァージニア・ウルフ小説のような「意識の流れ」 @DVD
昨年5月に公開された英国映画『帰らない日曜日』、DVDで鑑賞しました。
公開時に気になる映画としてピックアップはしておいたのですが・・・
そのときは「戦前の英国を舞台にしたラブロマンス。階級差などもも感じる物語で、文芸映画という雰囲気が漂ってきます」と記しています。
さて、映画。
第一次世界大戦終結からしばらくたった1924年の英国。
日本の「藪入り」にあたる母の日。
その年の母の日は、3月にもかかわらず初夏のような暑さだった。
さて、ニーヴン家のメイド・ジェーン(オデッサ・ヤング)は孤児であるため、同僚のメイドは帰っていったが、母のもとに帰ることはない。
ただし、当主(コリン・ファース)からは一日の暇とささやかな小遣いが与えられていた。
当主たちは日ごろから付き合いの深い二隣家を誘ってのピクニックだが、戦死した息子たちのことを思い起こすと楽しいばかりではない。
暇をもらったジェーンが向かった先は、隣家のシェリングハム家。
戦時下は幼く、それゆえ生き残った末息子ポール(ジョシュ・オコナー)との逢瀬のためだ。
だが、ポールもピクニックに行かねばならない。
甘美でゆったりとした時間は短かった・・・
といったところから始まる物語で、ジェーンとポールの逢瀬、三家族のピクニックがクロスカットで描かれていくのですが、しばらくすると老女が映し出され、ブックショップに勤めるジェーンの様子も描かれる。
老女はジェーンの現在の姿であることは早々に察しがつき、ブックショップに勤めるジェーンはニーヴン家のメイドを辞した後の姿なのだろう。
脈絡がないので少々戸惑うのだけれど、どうもジェーンは後に作家になったようだ。
ブックショップ勤めのときに知り合った黒人哲学者に作家になったきっかけを訊かれたジェーンは「きっかけは3つ」と答える。
ひとつ目は生まれたとき、二つ目はタイプライターをもらったとき、三つめは秘密、と。
三つめは、ポールとの逢瀬に潜んでいるのだろう。
悲恋に終わったに違いない・・・
と、まぁ、これは観終わったから書けるわけで、観ているあいだはあまりわからない。
映画の時制が複雑だからなのだが、これは意図して時制を複雑にしたのではなく、劇中幾度と引き合いに出されるヴァージニア・ウルフの小説のような、作家(ここでは年を経た老女になったジェーン)の「意識の流れ」の映像化なのだろう。
それがわかると興味深く観れるのだが、そうでないと、やはりただわかりづらいだけかもしれません。
とはいえ、ポールとの逢瀬のシーンの、構図や焦点を少しずらした映像のアンニュイさは素晴らしい。
それほど美男美女でもないのだが、美しいと感じました。
老作家となったジェーンを演じるのはグレンダ・ジャクソン。
70~80年代にはしばしば映画で観ていたけれど、久しぶりにみたら、ほとんど誰だかわかりませんでした。
脚本はフローレンス・ピュー主演『レディ・マクベス』のアリス・バーチ、監督は『バハールの涙』のエヴァ・ユッソン。
ストーリーがわかったうえで見直すと、よりおいしく観られるかもしれませんね。
評価は★★★☆(3つ半)としておきます。
参考作品として、『めぐりあう時間たち』『彼女のいない部屋』を挙げておきます。
ヴァネッサ・レッドグレイヴ主演の『ダロウェイ夫人』も挙げておきたいのですが、未見なもので・・・
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2023年映画鑑賞記録
新作:2023年度作品: 4本
外国映画 1本(うちDVDなど 0本)
日本映画 3本(うちDVDなど 0本)
旧作:2022年以前の作品: 7本
外国映画 2本(うち劇場鑑賞 0本)←カウントアップ
日本映画 5本(うち劇場鑑賞 0本)
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